敷地は、お寺が佇む森とその先に小さく家々が見下ろせる景観地です。そんな小高い住宅地の角に建つ、空を見つめる家・・・建て主さんご夫婦のための癒しの空間です。
北西へと角度を振った白い筒状のヴォリューム部分は、空へと伸びる道すじをイメージし、1階部分の色を絞ることで2階がふわりと宙に浮いているかのような非現実性を表現しています。
室内から見ても、空まで連続性が保たれるようにと、1階畳コーナーから祈りの間、そして軒天に至るまで傾斜する天井を持つ吹抜け空間としました。構成要素を最小限に抑えることで、この家全体の精神性を高めています。
2階の空へと突き出したその場所が、祈りの間です。小上がりを一段上がり、祭壇の奥に空が広がります。
手前にある山と山との間、北西にそびえる泉ヶ岳を抜け、空が一番遠くまで見渡せる方向へと祈りの間は向けられています。
さらに軒と袖壁の出を1200mmと深くすることで近景の人工物を遮り、祭壇の霊性を高めています。
地球環境の保護・地球環境との共生を目指し、産業廃棄物を主原料とした建材を多く用いています。
主な居室の壁面には、産廃であるホタテの貝殻を利用したチャフウォールを採用しました。
吸放湿性のある天然素材の健康塗料の利用は、奥様の体調に配慮してのことです。
断熱材には、新聞古紙を利用したセルローズファイバーを採用。
断熱性だけでなく、調湿性・遮音性・吸音性の性能を併せ持つ断熱材を選定しました。
風の通り道を意識した窓の設置、屋根野路板間の通気層の確保による熱の放射により、エアコンをあまり使いたくないという要望に対応しています。
暖房は、電気ヒーターパネルを地下土壌に埋設し、地中から暖める土壌蓄熱式輻射床暖房システムを採用。
全館暖房とし建物内の温度がほぼ一定に保たれることから、ヒートショックを抑制できると考えられます。
高齢を控えたご夫婦が既存住宅の寒さに悩まされていたため、この暖房システムが採用されることとなりました。
また、北側に位置する祈りの間の開口部の断熱性を上げるため、Low-Eガラスを採用し、エネルギーのロスに対処しています。
空にかかる雲に同化したいかのような真っ白な建物。
そこには、この家が心身ともに癒され、神聖な空間になってほしいという願いも込められています。
所在地 | 宮城県仙台市 |
構造・面積 | 木造2階建 133.93㎡ |
施工 | 建て主さん直営によるCM分離発注 |