■教育格差を埋める慈善事業
中国では、山間部の僻地の学校へ赴任したばかりの若い教師が早期に離職してしまう事例が多発しており、社会問題になっています。
学生時代をインフラの整った都市部で便利な生活を送っていた新任教師の多くは、山間部への赴任により数十年も昔に戻ったような不便な家で暮らすことになります。不便な生活に限界を感じた若者は早期に離職して都市部へ戻ってしまうのです。
そこで、若い教師が暮らしやすい工夫を古いコンテナに施し、コンパクトな住宅に改造して僻地の学校へ運び設置しました。少しでも若い教師の離職率が下がることを願ってプロジェクトに参画しました。
■設計の要点・・・20 フィートの中古コンテナの改造
コンテナは輸送しやすく設置も容易なことが大きな利点です。設計と改造は上海市内で行い、完成したコンテナハウスを僻地まで運び設置することになります。欠点としては、寸法が限られているので設計の自由度が低く、寸法のコントロールが難しい点です。
また、外装のスチールは熱伝導率が高いため温熱環境の整備に注意が必要です。さらに開口部を設けるとコンテナ自体の強度が低下するので、補強を考慮する必要があります。
平面計画はリビングに面して玄関を設け、キッチンやベッド、そして最も奥にトイレやシャワーを配置することでプライバシーに配慮しています。
構造補強を行った上で4 面開口とし採光と通風に優れた空間にしています。人間工学に基づく最小寸法を各所に活用し機能性にこだわった設計をしました。
また、スチール製の外周部内側に断熱材を充填することで空調負荷の低減を図っています。
●空間のゾーニング
20 フィートのコンテナは約13 ㎡の床面積しかないため、この限られた面積を4 つの機能にゾーニングしました。
① リビングエリア ②ベッドエリア ③キッチンエリア ④トイレ&シャワーエリア です。
さらにコンテナの扉を開くことでリビングに面した屋外テラスが出現し、内外の連続性を意識することで、広がりのある内部空間を目指しました。
●LOFT ベッドと収納
ベッドと収納を上下に重ねたLOFT ベッドとすることで、縦方向の空間を合理的に活用しました。ベッド下の収納は、布団の収納を中心に一人暮らしの若者には十分な収納量を確保しています。
●流し台と冷蔵庫
床面積に制約はあるものの、ミニキッチンと冷蔵庫を設置しています。現地の生活用水の水質が悪いことを考慮してシンク下に浄水器を設置しました。
このコンテナハウスは、様々なメーカーの協賛を得て製作されたボランティア主体のプロジェクトです。
主要用途 | 辺境地の若い教師の住宅 |
主な建築場所 | 中国中西部地区 |
延床面積 | 20フィートGP国際標準箱体(約13㎡) |
慈善団体 | 上海大城小愛「栄光の箱」 |
竣工年月 | 2021年12月 |