これは、上海市にある築20年の狭小住宅の改造である。
床面積約43㎡に7人が暮らす1人あたり6㎡という難しいプロジェクトだった。
ご夫婦と子供3人、そして子育て期間は一次的にご両親が同居するということで、最大7人の家族構成である。
■課題の整理
①約43㎡の狭小住宅に最大7名が暮らす
・床面積が約43㎡しかなく5~7人が暮らす住宅としては、1人あたり約6㎡と非常に狭い
・天井高が約2600mmしかない
②光環境が悪い
・外気に面している窓がバルコニー側にしかなく、玄関側の部屋の光環境が非常に悪い
・家族が集うリビング廻りの光環境は大切にしたい
③子育てに適した住まいには、ほど遠い
・子供は成長が早く、変化への柔軟性が求められる
・何より子育ては家族間のコミュニケーションが鍵、家族が集うリビング廻りの光環境は非常に大切
・いつも親に見守られている安心感が必要
■コンセプト
【子育てに適した狭小住宅】
①子供の豊かな心を育む
●家族のコミュニケーションが大切 → コミュニケーションが図りやすい工夫を施す
②安心・安全であること
●空気と水環境
・F☆☆☆☆やEO建材等を使用し、VOCの発生を抑制する
・空気清浄器でVOC対策を行い、衛生的な空気環境を整える
・有害物質を吸着する建材を採用する
・セントラル浄水器で有害物質を排除し、家全体の衛生的な水質環境を整える
※子供は大人の約2倍もの化学物質を取り込む
●子供は成長が早く、短期間で要求が変化し続ける
・家に対する家族のニーズの変化へ、柔軟に対応できること
①約43㎡の狭小住宅に最大7名が暮らすための工夫
・【兼ねる】リビングと夫婦寝室を兼ねることで空間を有効利用
600×600の『可変性』のある箱のレイアウトを変えることで、様々な空間を実現
・家族の成長やニーズの変化に合わせた可変空間パターン
リビングのソファもベッドも全て600角箱いす。
将来のニーズによりレイアウトを変更できる。
・【重ねる】子供室を上下2層に重ねることで空間を有効活用
カプセルホテルを参考に、最小限の寝室空間を快適にするよう工夫した。
子供室を重ねることで、「寝る」「学ぶ」「遊ぶ」「収納する」という4つの機能へ変えられる空間とした。
子供室を2層に重ねて寝室と学習スペースや収納スペースを確保した。
子供達の健やかな成長のために、セントラル浄水器や空気清浄器等の設備配管は天井裏に埋設している。
②光環境の改善
・日当たりの良い南側へリビングを移動する
この家で唯一の採光が得られるバルコニーを室内空間に取り込んだ(日本では法律や規範上、バルコニーを室内に取り込むことはできない)。
③子育てに適した住まいのための工夫
・家族間のコミュニケーションを誘発する工夫をした
・子供の成長に合わせて可変できる住まいにした
家族構成 | 5人(ご主人(37)・奥様(35)・長男(6)・長女(0)・次男(0)+α(子育て期間は一次的にご両親が同居) |
主要用途 | 集合住宅 |
建築場所 | 中国上海市 |
延床面積 | 約43㎡ |
構造 | 鉄筋コンクリート造6階建 |
築年数 | 約20年 |
竣工年月 | 2016年9月 |