上海市多倫路は、かつて旧日本海軍武官の駐屯地でした。歴史と文化の縮図として保存されてきた場所です。
ここで、100年ほど前に日本人が建てたという古い住宅の改造を行いました。
範囲は3階建ての1階部分のみで、約40㎡の小さな住宅に70歳代のご夫婦が暮らしていました。
共用の階段が内側にあるので、プライバシーの確保が難しい造りでした。
かつての厨房とトイレは、共用廊下に面して配置されていたようです。
木材とレンガで造られていましたが、老朽化も激しく、構造補強が必要でした。
そこで、同済大学の構造の先生の協力を受けて補強工事を行いました。
課題だった内側の共用階段は、上階の人の了解を得た上で、階段の位置を変更することにしました。
階段を外側に移動することで、全てが独立したプライベートな空間になりました。
手すりや壁面収納・折り畳み式スツールなど、限られた床面積を合理的に組み立てるとともに、高齢者が快適に暮らせるように配慮しました。
伸縮可能なテレビブラケットは、狭小空間における限られた視野角の問題を解決します。
テレビは、様々な角度に伸ばしたり回転させたり出来るので、寝室での視聴も可能です。
また、東側全面に設置した壁面収納の手すりカウンターは、物の出し入れに便利なだけでなく、家中の全ての移動をさりげなく助けています。
寝室の照明計画は、出来るだけ均一な照度分布を心がけました。柔らかな電球色の色温度(3,000K~4,500K)とし、
まぶし過ぎない光で高齢者の視覚に順応するようにしています。
また、寝室の壁面に施した呼吸するタイルは、タイルの多孔質層によって湿度調整し、空気の浄化も高めています。
浴室・サニタリールームは、最も滑りやすい場所なので、シャワールームやトイレの脇に手すりを設置しています。
ミラーキャビネットは、サニタリールームの収納機能を効果的に高めています。
また、シャワールームの床排水口を埋め込むことで、段差のない空間にしています。
トイレは、狭い空間の為、上部にソフトバッグを施し衝突を防いでいます。
家族構成 | 夫婦(70歳代) |
主要用途 | 住宅 |
建築場所 | 中国上海市多倫路 |
構造 | レンガ造3階建1階部分 |
延床面積 | 約40㎡ |
竣工年月 | 2019年1月 |