体に障害をお持ちの方の家というと、介助用具や既製の手摺などが強調された、まるで小さな施設のような、住まいと呼ぶには程遠いものがあまりにも多すぎます。
もっと自然にさりげなく暮らすことはできないのか・・・?
田尻の家はこのような思いから計画されました。
この住まいは各種メディア等に紹介されています。
グレーのパーゴラは、玄関への自然なアプローチと共に駐車動線との分離の役目を果たしています。
玄関は上がりかまちのないフラットな床面とし、車椅子(外用、内用)の乗り換えを考慮した広い空間を確保しています。
手摺は、既製品によく見られる樹脂製のものではなく、腰壁と一体化させた木製の温かみのあるデザインとしました。
ベンチ型下駄箱は、杖もお使いになるご主人の靴の履き替えにも役立っています。
広いリビングは、テラスとの段差がないために自由に行き来できます。
グレーチングで雨水の浸入を防いでいますが、万が一のために軒を深くしています。
その分暗くなりがちなリビングにトップライトを設けることで、明るさと換気の両方を満たしています。
また、可動間仕切りにより、客間との一体利用を可能にしました。大勢の来客に対応できます。
腰壁は一般によく使われるものですが、キックプレート(車椅子用巾木)の役目も果たします。
どのような身体状況の人にとっても開閉しやすいように、内部建具はすべて引き戸とし、引き手を木製手摺と同形状の握り棒にすることで、手摺の違和感を排除しました。
台所は従来の車椅子対応キッチンのウイークポイントを解消した、より使いやすいキッチンとしました。
車椅子対応キッチンは車椅子で足が入ることのみを優先しているため、シンクが浅く水がはねてしまいます。
また、流し台と同じ高さのレンジ台では、車椅子で鍋のなかを覗くことはできません。
このような欠点を解消するために、田尻の家では市販の流し台の巾木を切って、レンジ台は奥様の使いやすい高さまで下げています。
浴室へは自立で移動するため、脱衣スペースを車椅子座面と同レベルにし、スムーズな移動を考慮しました。
結果として健常者による介護はしづらい構造となっていますが、建て主さんとの度重なる対話の中で、”あくまでも自立で介助を要しないスタイル”という強いご希望により計画したものです。
従って将来、身体機能の低下に対応できるよう、天井走行リフター用補強梁を天井裏に設置してあります。
所在地 | 宮城県大崎市 |
構造・面積 | 木造平屋建 150.30㎡ |
施工 | サンハウザー株式会社 |